
飲食店家賃からみた「平均売上」を考える【業界人が語る】
Contents
1.ラーメン店は価格と席数と回転数から賃料を逆算せよ
まず最初に、固定費となる適正賃料を導き出し、物件選びの基準を決める作業からです。 事業計画上では店内の席数が何席で1日何回転するから売上はいくらと計算していることでしょう。その通りですが、もう少し踏み込んだ工夫が必要です。 逆に、初めて飲食店を出される場合、往々にして物件を見て事業を組み立てようとされます。その結果、売上以上に高い家賃を払うことになることがよくあります。なぜなら、目の前の物件を気に入ってしまいあまい事業計画が作られるからです。 そのような事態に陥らないよう競合店の売上状況をよく観察し下記のようなシミュレーションをしてみましょう。仮説店舗:契約面積10坪・席数8席・1食の調理時間7分・1食の食事時間8分・入店から退店まで一人当たりの所要時間は15分となります。つまり1席当たり1時間に4回転となります。席数は全部で8席ですからお店全体で1時間に32名のお客様に食べて頂ける計算になります。 ・ランチタイムの11:30から13:30はほぼ100%稼働しますが、それ以外の時間帯はガクッと稼働率が下がります。こちらは70%程度と想定します。 ・また、夜の時間帯17:30~21:30の稼働率は平均して50%程度です。これを計算すると計150名のお客様が来店されることになります。 ・月の営業日が25日(土日の想定はナシ)、1杯の想定価格が800円だとすると月の売上は 150人 × 800円 × 25営業日 = 300万円/月 売上に対する賃料負担を売り上げの1割とすると家賃は月額30万円迄支払うことが可能です。想定が10坪でしたから「坪単価@3万円」となりますから都内でも比較的いい場所に出店が可能です。 今回は土日や雨の日の想定まで行っておりませんが、周辺競合店を回ってみてお客様の入り具合から十分適正賃料を逆算できると思います。最後にもう一度言います、その賃料以上の物件は見送ることとしましょう。
飲食店 お客様の「回転数」をあげる工夫は1分・1席を無駄にしないこと
2.レイアウトから理想の部屋型を導き出す
ラーメン店には必ず券売機があります。これは、人件費削減と回転率を上げることが目的で設置されています。店内で、注文を伺ったり代金の精算を行うことでとられる手間と時間を省く為です。 同じ発想で、ラーメン店はカウンターのみが一番効率が良いとされています。有名牛丼店なども同じ発想です。上記のような8席のお店であれば、ラーメンを作る調理人が1名と配膳と下膳の担当が1名、計2名で十分です。夜稼働率が下がる時間であれば一人でも十分切り盛りできます。 つまり、人件費などを考えると断然カウンターだけのお店が利益を生むことがわかりました。なかにはテーブル席のあるラーメン店を見かけますが、ラーメンバルやチョイ呑みメニューを出していないお店はやめておくべきです。運ぶ手間もさることながら、稼働率を下げる結果となります。それは収益から無駄な賃料の支払いが生まれるということを意味するのです。3.競合店調査と街の特性からメニューを考える
ラーメン店に限ったことではありませんが、近隣にある同じ業態のお店の調査は欠かせません。どのような味で出しているのか、価格帯はどうか、時間帯別にどの程度お客様が入って居るのかなどを調べます。 もし、同じような味付けのラーメンで競合店が近くにある場合は、価格か話題性かなんらかの勝機を見出さなければ出店後稼いでゆくには厳しいでしょう。 それとは別に街の人気店(別業態)の動向も重要です。ランチ時に流行っている店の価格帯や客層など重要なポイントです。彼らから客を奪う為に何が必用か考えなければ、オープン当初の物珍しさの時期を過ぎると客足が離れる可能性があります。ここは慎重に十分にリサーチを行いましょう。4.飲食店の立地は駅から徒歩何分までならOKか
駅前の商圏でお客様をつかまえるのか、ビジネス街でお客様をつかまえるのかなどどこで商売をするのか決める必要があります。言ってみれば観光スポットでもいいわけです。俗に言う集客装置が近くにあるかどうかということです。 駅やオフィスビルなどは少々離れていてもラーメン店へは目的を持ってお客様が来て下さるのでいいのですが、そうは言っても徒歩「7分の壁」が存在します。 特に、ランチタイムの1時間で、往復14分の道のり、店先で仮に10分並んだとして、店内で正味15分の食事、これだけで39分です。途中コンビニによって買い物を10分すれば残りのランチタイムは10分しか残りません。雨の日であれば行くのを躊躇する距離となります。一般的に「7分の壁」なる限界説がささやかれる根拠はここにあります。飲食店を悩ませる宣伝・稼働率・距離の問題を新しい発想で解決する
5.ラーメン業態では同業の居抜き物件が要注意なワケ
都内で1年に閉店するラーメン店の数が300店舗。それに対し1年でオープンするラーメン店の数は300店舗などと言われています。もはや都市伝説化する噂です。 第一に、利益の出るラーメン店はカウンターだけのお店が利益が出るとお話ししました。ということは、間口が狭く奥行きがある部屋型か、間口が広く奥行きがない部屋型のどちらかになります。お分かりのように、物件としてはかなり限られるということです。 次に大家さんの承諾です。頃合いよく物件が出てきたとしてもラーメン業態を嫌がる大家さんが多いのも事実です。賃貸借の申込をしても断られる可能性は50%つまり2回に1回はお断りを受けるということです。 まだあります、物件が少ないことや大家さんの了解が取りづらいことを見越して、賃料を高く設定する不動産会社が相当数あります。 その結果、高い賃料に売り上げの大半を奪われてしまい早期の閉店に至るケースが後を絶ちません。それらの物件が居抜き店舗物件として世の中に出てくるのです。自分は大丈夫と過信せず、本編の(1)で検証したごとく十分に賃料負担能力に関し検討を行ってください。6.他の飲食業態居抜き物件を改装する方法がある
ラーメン店を始めるにあたり他の飲食店業態の居抜き物件を活用する方法を公開します。 ターゲットは「寿司屋」さんと「スナック」の居抜き物件です。 この共通点は比較的面積が小さくカウンターだけの作りが多いことです。改装にもさほどお金はかかりません。 但し弱点もあります。「ガス容量」と「排気能力」です。 寿司屋、スナックは一般的に3.5号など家庭用のガス引き込みしかなないところが多く、ラーメン店を開業するのに必要な10号には程遠いサイズです。かといって足りない分を大掛かりな引き込み工事をするのではなくプロパンガスで補いましょう。相当安い工事費で済みます。(プロパン会社が設置費用を負担することがほとんどです。) また排気は室内ダクトの増設か有圧扇など排気能力の強いものに交換することは必須です。でないと室内は暑くてたまりません。 豚骨ラーメン系の臭い対策では、消臭フィルターを設置するかダクトを少々高い位置まで立ち上げれば近隣からのクレームはあまり出ません。オフィス街、駅前、住宅街など周りの環境に応じた対応が必要です。飲食店と分譲マンションの意外な共通点~決め手は売り出し前の企画力~